以前のHLでも車の盗難を防止するためのSoracomのGPSマルチユニットを使ったLINEサービスを作りました。 正直それを作って運用している時に
そもそも盗難の被害に遭う前のもっといい対策はないのか?
と思うようになりました。
そんなある日、会社から帰ってくると愛車のシルビアにこんなチラシが挟まれてました。
これネットでは盗難できるかどうか見るために挟まれると言われています。そう、愛車が狙われたのです。 結局GPSを積んでいても取られてからでは遅い、何か新しい対策をしなければならないと強く思う用意なりました。
車の周りに近づいただけで警報を鳴らす事がでいないか?それも自分で検知範囲や閾値を設定できるといいな。そう考えて色々調べたものの、当時最適なセンサーを見つける事ができず、その時は開発を諦めてしまいました。
その後駐在で中国に来ることになり愛車から離れたところで生活することになり、急いで必要だという気持ちもなかったのですが、たまたまタオバオ(中国のAmazon的な巨大ECサイト)を見ている時、中国では赤外線人感センサーではなく、レーダーセンサーを使って人を検知してライトのON/OFFをしているという事がわかりました。 早速商品を買って試してみて、これだと思いました。
https://x.com/Norio_Delux/status/1621569742321614852?s=20
このレーダーセンサーを応用したら、この2つの課題を解決できるかもしれない、中国に住んでるからこそセンサーを簡単に入手できる。そう考えて開発を再度スタート、ここまで来る事ができました。
ちなみに・・・最初は車のセキュリティだけのつもりだったのですが、今年になり子供が産まれお父さんになると、子供の置き去りが気になるようになりました。実際に今年の夏に一時帰国した時にチャイルドシートに子供を乗せてドライブに行く事がありました。すると、本当に静か。車の振動で寝ちゃうんですね。下手したら存在忘れるよなと。
その時に実はこのシステムは他の用途もあるよなと気づき、かなり需要があるかもしれないと考えて本格的な量産を視野に入れた開発をするようになりました。
最初は深圳にあるセンサーのサプライヤーに問い合わせてサンプルを入手し、サポートを得ながら開発を進めました。しかし、このサプライヤー選定がとても苦労しました。今回の作品を作る中で、幾つものセンサーを購入し、それに合わせてPCBを設計してコードを書いて動かしては実験というプロセスを繰り返すことになったのです。
最初のサプライヤーはカスタムをしたがる会社で、サンプルセンサーにバグがあって信用できなかったり、次に選んだセンサーはガラス越しに人が立っていることを検知できなかったりと、センサーを決めるに時間がかかりました。最終的にLD2410というセンサーに辿り着いたのですが、ここまで来るのに時間が結構かかりました。
またシステム構成でも説明したように今回はセンサーの値を見ながらユーザーが検知範囲等を決められるかが肝だと考えて、この部分はかなり作り込みをしました。 ただのセンサーでは購入には至らないはず。それでは他の製品と同じになってしまう。 ユーザー使いやすい製品にする事が必須でした。
そこでESP32を活用し、APモードで値を常に見れるようにするという方式をとりました。 私はハードウェアエンジニアなので、htmlもよく分からず、APモードを作り込む自信がありませんでしたが、ChatGPTの存在を知り、ChatGPTのサポートを得ながらAPモードを作り込みを行い、結果満足のいくインターフェースを作る事ができました。正直ChatGPTがなかったらこのプロダクトを作り切る事はできませんでした。
また今回は無線のセンサーを作るという事で筐体の設計にも苦労しました。 センサーのサプライヤーから筐体設計のアドバイスドキュメントが出ているのですが全て中国語。 中国語勉強しておいてよかった・・・なんとか読み進めて何パターンか設計し、MJF方式で出力した筐体を使って感度の実験を行いました。その結果今のフラットな形状に行きつきました。筐体に無線のセンサーを収めるのはとても面白い体験でした。ほんの少しの形状の違いで大きく感度が変わることともわかりました。
このプロダクト、今後量産しようと考えています。既に車よりも厳しい条件での実験を行っており動作に不安はないのですが、問題は技適。使用しているレーダーセンサーは技適が取れていないので、この技適を取得する必要があります。サプライヤーからはCE,FCCに準拠していると聞いており、かつ技適の内容を確認すると24GHzの周波数帯はOKなようなので見込みはありそう。
もちろん追加ハードウェアも必要で、シンプルなところでいえばウィンカーを光らせられるようにしたり、90年代の車だとキーレスエントリーが標準でないため、別途ドアロック信号やアンロック信号を出すためのリモコンとそれを受け取るハードを作り、多くの車に対応させていく必要がありそう。
このRCS-01、なんとかして世の中に出したいと思います。
このプロダクトは愛車のウィンドウに貼り付けて使うモノとなっております。 そのため12V系の電源を5Vや,3.3Vに変換し、ESP32やレーダーセンサーを動かしています。
システム自体はとてもシンプルで、先述のESP32、レーダーセンサー、そしてインジケーターのフルカラーLEDとタクトスイッチから構成されています。 また自動車からは電源んだけではなくドアロックアクチュエータを動かすための信号や、アクセサリー電源の信号を取得できるようにし、基本的にユーザーが車の操作をすると、それに連動してセンサーが動きだしたり、センサーを止めたりしています。
インターフェースについてですが、LEDは現在どのような動作をしているかを示しており、セキュリティが起動しているときは威嚇のために定期的に点滅します。 タクトスイッチは例えば一時的に機能をOFFにしたり、アクセスポイントとなってセンサーが反応する閾値をリアルタムにセンサー値を見ながら変更するといった機能を起動するために搭載されています。 これらのハードウェアを使い、ユースケースに合わせて動作するようにしています。
ちなみに取り付けイメージはこんな感じです。(暗くてすみません)
このセンサーシステムは以下のユースケースに合わせてシステムを構築しているので、 車の乗降を想像しながら読んでいただけると理解が深まると思います。
このように車からオーナーが離れたときに本センサーが働くことを想定してシステムを構築しました。 そのため車に近づくだけではなく、ロックした後に車の中で人がいることを検知してもシステムは警報を鳴らす事ができます。
このシステムの特徴はただセンサーを取り付けて車に最適化しただけではなく、ユーザーが使いやすいようにセンサーを設定できるというところにあります。 世の中には同じような目的で開発されたセンサーが他にもありますが、それらを調べていくと可変抵抗を調整するだけで、非常に曖昧かつチェックしようと思ったら実際に鳴らさないといけないような製品ばかりでした。
このRCS-01はそういった不満も解消できるような工夫をしています
ESP32をアクセスポイントにする事で、スマートフォンでリアルタイムにセンシング情報をチェックする事ができるようにしました。またその値を見ながら設定を行うことも出来且つ設定した値はすぐにシステムに反映されるため、簡単に微調整ができるようになっています。
設定項目は以下になります
車検等自動車を預けるシーンでは絶対に警報が鳴らないよう、一時的にオフする機能をつけました。 LEDが黄色になるまでスイッチを押し続け、離すと一時OFFモードになります。
これで車検などのためにわざわざ電源を切ったりする必要はありません。 復帰させるときは同じようにLEDが黄色になるまで押して離せばOK。
とてもシンプルなシステムではあるものの、まだ私の想像できていない使い方があるかもしれませんし、気づいていないバグもあるかもしれません。そんな事があっても後から対応できるようにOTA機能を搭載。Google Driveに格納されているFWをDLして書き込む事ができるようになっています。
しかし、システムを作ったものの中国では GoogleがVPN経由でしか使えない関係で動作確認ができていません。こちらは日本に帰国後に確認をする予定です