百人一首かるたほど、経験者と初心者で露骨に実力差が出るゲームは珍しいです。そもそも100首の和歌を覚えていないと話にならないって何ですか。人生ハードモードですか。
私だって普通のかるたならそんなにひどい目にあわないと思ってるんです。読み札が読まれたら、その頭文字の書いてある札を探すだけですからね。反射神経勝負です。ところがです。百人一首かるたでは「読まれ始めたらすぐ探す」が通用しません!「決まり字」というものがあって、「何文字めまで読みを聞いたら、候補の札は何枚に絞れる」のようなチート知識を活用することが常識。
さ ら に
百人一首かるた経験者は、基本的に全ての札がどこに置かれているか、暗記してます。これ恐ろしい事実です。やばくないですか?
もし100首の和歌を全部覚えていて、「決まり字」の知識も会得し、どの札がどこに置いてあるか暗記していたら。そのゲームは、実はもう私達の知っているかるたではありません。どちらかというと、ものすごい短時間のうちにもぐらが穴から出たり入ったりする、もぐらたたきみたいなゲームになります。正解のもぐらと、おとりのもぐらがいて、正解のもぐらを先に叩くゲーム。
打ちひしがれるあなたの前に、もぐらたちがひょっこり現れました。
「苦労してるみたいだね。僕らと"契約"しない?」
・・・よいでしょう。我が魂と引き換えに、我に力を!
かくして、百人一首かるたともぐらたたきは悪魔合体したのでした。
私達は、対人ゲームをもっとインクルーシブにする活動をしています。世代を越えて、多様な人たちが楽しく遊べるゲームとはなんだろうと考えてこのゲームを作りました。実力差を補うために着想したもぐらたたきですが、結果的に百人一首のルールが難しいと感じる子どもや、日本語や日本語文化に馴染みのない海外の方などにも勝負を楽しんでいただける工夫になっていて、ポテンシャルを感じます。
他にも、体の不自由なお年寄りでも楽しめる工夫とか、視覚・聴覚に障がいのある方でも楽しめる工夫とか、いろいろ考えて取り組んでいるところです。
小さい頃、正月に親戚が集まった時、おっとりとした伯母さんに百人一首かるたでボコボコにされて負けたこと、楽しかったけれど悔しくて、鮮明に覚えています。伯母さん、もぐらに魂を売った私と、もう一度今、勝負してください。