【概要】
本作品は、すべてが最適化された理想的な未来の裏側に潜む、自身の存在の喪失という恐怖を体感するためだけの作品 です。
目の前に立った人の顔を認識・撮影を行い、あたかも意思を持っているかのように振る舞うアバター(≒デジタルクローン)をコンピュータグラフィックスにより生成し、犬型オブジェクト を通じて提示します。
【体験】
「Tu fui, ego eris」と対面すると自分の顔がトレースされ、表示されます 。その表情は、何か話すわけでなく、瞬きをしたり、ゆっくり顔の向きを変えたりします。目でこちらの動きを追ったり、ただこちらの行動に反応します。それによって、見る人に作品の奥行を見出してもらいます。
また、デジタル上のクローンは投影先が人型に限定される必要はなく、無機物や人間以外の生物も容易に適用が可能です。今回の作品では人間が最も慣れ親しんだ動物として犬を選択し、「人ではない別の生物」に自分が投影されている違和感と不気味さを効果的に表現します。
【制作の背景】
物理的な生命生物としてのクローンは世界中で研究が進められていますが、ヒトのクローンが造られることは種々の問題からまだまだ遠い未来の事だと思います。
一方で、AI の進化は隆盛を極めてきており、問い合わせ業務のチャットボット化や電話応答の自動化など日常生活に広く普及しはじめています。人々が思っているよりもかなり早く、電話や画面越しの相手が人間であるか、 AI であるかは判別できなくなります。加えて、VR デバイスやテクノロジー、サービスの加速度的な進展によって、我々は移動コストをはじめとする物理的な制約から解き放たれつつあります。近い将来、virtual と real の境界は曖昧になり、VR 空間ではリアルアバターを身に纏い仕事にレジャーに勤しむことになります。
リアルアバターはデジタルデータの性質上、無限にコピーすることが可能です。個人個人の性質を学習したAIを自分のリアルアバターのコピーにインストールし、ゲーム世界を構成する NPC (Non Player Character)のように、VR空間内の様々な仕事・役割を担わせていくことは想像に難くありません。言うまでもなく、AI が投影されたリアルアバターのコピーとは、実世界におけるクローンと限りなく近いものであると考えています。
このような思考の元、自分のデジタルクローンと向き合ったときにどのような感情が芽生えるのかを、今すぐに体験できる作品を作りたいと思いました。
本作品は多くの人に楽しんでもらうため、あえて実物にこだわり、犬型のオブジェクトの中にプロジェクタを内蔵することで、VRゴーグルなしで体験できる作品 としました。また、本体は高さが約50cmありますが、筐体はAutodesk Fusion 360を用いて設計 し、家庭用3Dプリンターにより分割出力して作成しました。外観は石膏を始めとする表面処理を施すことで、本物の石像のような質感を実現しています。
Wow
エモ!!!
YouTubeで紹介させて頂きました!
https://youtu.be/5G4saVukHX4