- データ取得
・抽出温度の取得には防水温度センサ(DS18B20)
・環境情報の取得には温湿度圧センサ(ENV Ⅲ)
※環境情報:室温・湿度・気圧
- データ蓄積
マイコンモジュール(M5stack core2)を介してAmbientにセンサ情報を蓄積
- データ可視化
Pythonを利用し,蓄積したセンサ情報の可視化
珈琲の抽出時における味の再現性向上に向けた環境情報及び抽出温度の記録システム
・抽出温度の取得には防水温度センサ(DS18B20)
・環境情報の取得には温湿度圧センサ(ENV Ⅲ)
※環境情報:室温・湿度・気圧
マイコンモジュール(M5stack core2)を介してAmbientにセンサ情報を蓄積
Pythonを利用し,蓄積したセンサ情報の可視化
Recording system for environmental information and extraction temperature to improve taste reproducibility during coffee extraction.
1. 背景・目的
珈琲は世界中で広く愛用されている嗜好品であり,味に留まらず匂い等で楽しむことができる.珈琲の味に影響を与える三大要素は,焙煎・粉砕・抽出とされており,いずれも現在では家庭で行えるに至っている.特に抽出において最も普及している方法がハンドドリップであり,この方法は手軽ながらも練度に左右される.珈琲は抽出温度や環境情報に味が大きく左右され,味の再現性が低いことが課題として挙がる.そこで本課題の目的を珈琲の味の再現性向上に向け,環境情報及び抽出温度の記録システムの構築とする.
2. 環境情報及び抽出温度の計測方法
収集するデータは抽出温度及び環境情報とする.このとき,環境情報として室温・湿度・気圧の3つのデータを対象とする.抽出温度の取得には防水温度センサ(DS18B20)を使用し,環境情報の取得には温湿度圧センサ(ENV Ⅲ)を用いる.取得したデータはマイコンモジュール(M5stack core2)を介してAmbientに蓄積される.蓄積されたデータはpythonによって可視化・解析する.防水温度センサ(DS18B20)はVcc, GND, DQの3つの配線があり,接続の際には4.7 kΩのプルアップ抵抗が必要となる.また防水温度センサ(DS18B20)にはプルアップ抵抗の役割を持つPlugable Terminal転送器が付属している.
3. センサ類とマイコンモジュールの格納カバーの設計・試作
センサ類とマイコンモジュールの格納カバーを3DCADによって設計し,3Dプリンタの熱積層方式により試作した.このとき,材料にはABS樹脂を用いた. 4. 人間と機械の味の分類に関する比較実験
センサ情報から珈琲の味の推定が可能かを確認することを目的に,人間による味の分類と機械による味の分類を比較した.人間による味の分類として “美味しい / 不味い” のラベリングを行った.また,機械による味の分類として,取得したセンサ情報を入力データとして2つにクラスタリングした.このとき,機械学習の教師なし学習であるk-means法を用いた.入力データには一度の抽出毎の温度・室温・湿度・圧力の平均値を用い,計10回の抽出のデータを用いることとする.
<実験条件>
・手法:ハンドドリップ
・種類:マンデリン
・質量:豆10 g
・焙煎:フレンチロースト
・粉砕:中細挽き
・鮮度:購入から10日以内
・備考:抽出時の開始温度は90℃以上
<実験系>
<実験結果>
結果として人間による分類と機械による分類の一致率は90%である.考察として,味の基準が酸味・苦味によって判断されていることが考えられる.酸味・苦味はトレードオフの関係にあり,温度に大きく左右されることが知られている.また,本実験の被験者(筆者)の味の好みが苦味であることから,温度すなわち酸味・苦味によって抽出されていることが考えられる.
5. 結論
本作品では,珈琲の味の再現性向上に向け,環境情報及び抽出温度の記録システムの構築を目的とし,試作デバイスの動作確認を行った.また,機械学習を用いて収集したデータを分析することで人間の判断と機械の判断に相関があることを確かめた.これにより,取得したデータから味の推定ができることが示唆された. 今後の展望としては,クラスタ毎の特徴量同士の相関を確認することでより考察を深めたいと考えている.また,珈琲は温度分布にむらがあるときに雑味が生じることが知られているため,センサ情報としてサーモカメラを追加することで温度分布の取得を目指す.また,温度分布を画像データとしてCNN系ネットワークによる教師あり学習を行うことで,事前に抽出中の味の予測ができるのではないかと考えている.